人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ぶたこな日々(^oo^)にようこそ。音楽で言葉で心で、今年もいろんな人と対話したいなぁ。

by butako

夢へ続く道25~コーラスのメンバーに報告

3月7日(金)

とうとうやってきました。シルバーコーラスの本番の日です。
市が主催する文化祭に出演する日です。
歌うのはたった三曲だけど、この日のために、半年近く練習を積んできました。年末に練習用のテープを渡してからは、みんな自宅でも自習を続けてこられて、今年に入ってからは、ますます自信をもって歌うようになられました。みんなのこの成長ぶりを、歌の心を聴いてくださっている人に届けられますように。

朝、10時半、いつもの練習場所に集って、一時間ほど最終練習。並び方なども確認します。あまりやりすぎると昼から疲れてしまうので、昼前には練習を終えて、いったん解散。

私たち夫婦とピアニストさんは、お弁当を買って、うちの家へ。昼からの本番はわが家から歩いてすぐのところなので、それまでうちで休憩することに。ピアニストさんとは、他の合唱団で初めて出会ってからもう20年以上のお付き合いになります。数々の思い出を共にしてきた彼女も今回のことをすごく応援してくれています。お弁当を食べたあとは、いろんな話をしたり、パソコンを持ってきて、前にニューヨークにいったときの写真を見たりして過ごしました。そうしながらも、私の心の中は、本番がうまくいくかどうか、そしてその後、楽屋で今回のことを報告するんだけど、みんながわかってくれるかどうか、不安がよぎります。いや、きっと大丈夫、みんなわかってくれる・・・と信じながらも。昨日考えた報告するときの文章は、印刷して、本番に持つ楽譜のところにテープで貼り付けました。緊張して言えなくなるかもしれないから、これを見なくちゃいけなくなるかも・・・と。あー、どうなるんだろう。

みんなともう一度集合したのが2時半。楽屋に移動して、コサージュをつけ、少しまた歌の練習。ほどなくスタッフの方から呼ばれて、みんなで舞台裏に移動します。

ステージは、本当に素晴らしいものになりました。前で振っていても、心がゆさぶられるようなみんなの歌声、メッセージが伝わってきました。きっと、お客様にも届いたはず。特に「愛燦燦」の最後で「人生って嬉しいものですね」と歌ったときのみんなの表情は、素敵だったなぁ。いーっぱい苦労してきたはずなのに、いーっぱいつらいこともあったはずなのに、その末にこうやって「人生は嬉しいものなのだ!」と笑顔いっぱいで言えるみんなが素晴らしいと心から思いました。

そして、本番後の楽屋で、みんなに今回の訪米のこと、話しました。
楽譜に貼り付けていた原稿を見ようと、いったん取り出したものの、結局見ることはなかったです。自分の言葉でみんなの顔を見ながら、ゆっくり話しました。

一年間、アメリカ・・・という言葉を聞いた瞬間は、多くの人が驚きと、不安の表情を浮かべました。でも、私がなぜ行きたいのか、説明を進めるうち、みんなの目に光があふれてきて、そして、最後には、大きな拍手をいただきました。

戸口にいた私に、帰られる際、皆さんが握手を求められ、
「がんばってきてくださいね」
「絶対戻ってきてくださいね」
「ついていきたいわー」
と、口々にいろんなコメントをくださいました。

最後の方になって、一人の方が近づいてこられ、
「先生・・・。私、先生が帰って来られるまで生きていられるかどうか・・・」って言いながら、私の手をにぎりしめ、嗚咽をはじめられました。

ほんの数年前まではすごく元気だったその方、最近手術をされ、入院もされていて、長く練習を休んでおられたのですが、最近復帰されました。でも、戻ってこられたときは、杖をつかなくては歩けなくなっていて、少しつらそうだったのです。そんな方に、この言葉は正直すごくつらかったです。でも、なんとか気力をふりしぼって

「そんな寂しいこと言わないでください。私が一年後に戻ってくるんですから、そのときまでに、今より元気になっている、そんな勢いで待っててくださいね。途中で皆さんにお手紙もきっと書きますから。ぜったいぜったい、元気で待っていてくださいね」と。

そしたら、握り締めた手を離さないまま、なんどもうなづいて、それからまた、声をあげて泣いておられました。私は思わずその方の肩を抱きしめてしまいました。

年にしてみれば、私の親よりも年上なんだけど、音楽を指導しているという点で、私にはみんな可愛い生徒ともいえます。でも、実際人生の先輩なわけで、その点では、みんなが私の親のようにも思えます。そんな方々との別れはつらいけど、多分、私以上につらいと思ってくださっているのは、メンバーの人たち。それでも、みんな笑顔で、送ってくださろうという気持ちは、本当に嬉しかったし、感動しました。

報告の最後には、私も思わず泣いてしまいました。
「本当は、私、すごく不安なんです。だって、向こうにいったら、みんな誰も日本語を話してしないでしょ、主人ともこんなに離れるのは初めてだし、ちゃんとできるのかって。でも、皆さんのこの笑顔を思い出して、がんばりますね。だから、応援してくださると嬉しいです」みたいに言いながら。

本番もとても素晴らしい演奏になったし、メンバーへの報告も無事おわり、これでほんとに肩の荷がいっぱい下りました。

すごく緊張したけど、なんとか気持ちが通じてわかってもらえてほんとによかった。
たこぶが代わりをしてくれるというところで拍手が来たのも嬉しかった。
あー、ほんまにほっとしたなぁ。


2月末の練習で、本番を迎えるにあたって、メンバーの皆さんにあてて書いたお手紙をここにあげておこうと思います。今回のことに対する私の思いが、ここにも含まれている気がするから。

************************
メンバーの皆さん、一年間の練習の総仕上げ、嬉しいステージの日がやってきましたね。昨年度は惜しくも出演を逃してしまいましたが、メンバーのご協力もあって老人ホームで素敵な音楽のふれあいを持たせていただくことができました。ああやって、聴いてくださる方と直接歌をとおして交流できる機会は貴重だったと思います。そして今年、見事、二年ぶりに市民文化芸術祭の出演を果たすことができることは、嬉しい限りですね!今回で6回目の出演となりました。

昨年、私たち夫婦は広島に旅をしました。原爆資料館に足を運び、地元の市民ボランティアの方にとても丁寧に館内を案内していただき、改めて、もうあんな体験は二度としてはいけないんだ、日本のことだけではなくて、世界中で起こさせてはいけないんだって強く思いました。私たち一人一人に、世界を変えるような力はないのかもしれません。でも、一人の力は弱くても、みんなでずっと強く思い続けていると、夢や願いはかなうものだと信じたいですよね。そして誰もが抱く共通の願いは、平和な世界、誰もが安心して住める世界、そして人々が信じあい、愛し合う世界ではないでしょうか。

そんなことを考えながら、今回私たちが演奏する3曲を選びました。

力を持つということは、どのぐらい意味があるのでしょう。まだまだ体力にも記憶力にも瞬発力にも自信満々だった、そんな若い頃の自分を思い返してみると、とても尊大だった気がして恥ずかしいです。なんて心が狭かったんだろう、なんてやさしくなかったんだろうと反省ばかりです。力を持つということは、そんな危険をはらんでいるのかもしれません。自分が一番だ、自分が正しいんだ、みんなが自分に従うんだと思い込んでしまうことで、大きな間違いを犯す危険があるのかもしれません。そんな意味では、弱さを知ること、衰えを知りつつも、人生の楽しみを見出すことは、とても大切なことのように思えてきます。年を重ねていくことの深さがそこにあるかのもしれません。

私はまだまだ皆さんに比べて、ひよっこですが、皆さんとの出会いで、本当に多くを学ばせていただいています。皆さんが歌っておられるときの輝く笑顔はすばらしいし、ときおり雑談させていただくときの皆さんが持っておられる器の広さや、経験してこられた多くの物語にはいつも心を動かされます。音楽という面だけでいうと、一応「指導」をさせていただいている私ですが、その他もっともっと大切なことを皆さん全員に教わっていると感じています。

誰とも出会わず自分ひとりだけで生きるなんて、不可能なんですが、もしそんなことができたとしてもきっと楽しくありません。人と人との出会いがあるからこそ、人生にいろどりが生まれるんですよね。このコーラスグループを通じて、私たち一人一人が出会えたことは、おおげさにいうと「すばらしい奇蹟」なのかもしれません。

楽しい仲間に感謝して、出会いに感謝して、こうして一緒に音楽できる喜びをみんなに伝えたい、一人一人が歩んできた色とりどりの人生を歌に込めて、ひとはときに哀しい、かよわいものだけど、それでも人生は不思議な出会いに満ちているし、喜びに満ちたうれしいものなのです!

皆さんお一人お一人の素敵な個性を、歩んできたすばらしい人生を、この15分間の演奏に存分に込めてください! 客席で聴いてくださっている一人一人の心に、鐘を鳴り渡らせましょう!!

皆さんの演奏を、楽しみにしています! 当日は、どうぞよろしくお願いします。

2008年2月29日 ぶたこ

***********************

そして、もう一つ。
当日報告するため考えた原稿。結局は見ないで言ったわけだけど、ほとんどこの内容で話したと思うし、記録のためにここに書いておこうかな。恥ずかしいけど。

******************
皆さん、今日はお疲れ様でした。
さて、ここで皆さんにちょっと報告したいことがありますので、座っていただけますか?

実は、突然なんですが、私、4月から一年間、アメリカに行くことになりました。
皆さん、びっくりさせてしまって申し訳ありません。この話は、今年の年明けには全くなかったことで、この一ヶ月余りで急に進んだ話なんです。正式に一年間滞在できるという許可が下りたのは、わずか一週間前のことでした。

本番に向けて気持ちを集中しておられる皆さんのことを考えて、福田さんとも相談させていただいて、この本番後の楽屋で報告させていただくことにしました。

何をするかというと、老人ホームでの一年間のボランティアです。
これは、英語を学びはじめてから、そして、皆さんとこうして音楽をずっと一緒にしてきた私の、永年抱き続けてきた夢だったことなんです。

私は幼い頃から、親と離れて暮らしていた時期が長く、私にとって周りにいる大人たちが家族のようなものでした。学んできた英語と音楽で、誰かの役に立てたらどんなにいいだろう、世界の人と交流して、いろんな文化や考え方を学び、日本のことも知ってもらえたら、そんなことが自分にできたらどんなに素晴らしいだろう、とずっと思っていました。

でも、一応・・・と言いますか、主婦である私が、1年も家を空けるなんて考えられないし、何の資格や学歴もない私を受け入れてくれるところもないに違いないとあきらめていました。

でも、ここ数年、私たちの周りで何人にもの友人が、若くして亡くなり、人生、明日という時間がいつもあるとは限らないのだと気づき、あきらめていないで、もうひとがんばりできないだろうかと考えるようになったのです。

実は、この一月の末だったか、主人と話していて、そのときに、私がいつかやってみたい夢として、外国の老人ホームで長期ボランティアをして、お年寄りの話し相手になりたい・・・というのがあると話したことがきっかけなんです。主人は驚くほどすんなりと、「やりたいのなら、やってみたら?向いてると思うわー」と言ってくれたんです。

幸い、主人の父も昨年の手術を終えて元気になられたし、私の母も今のところ健康で一人暮らしをしています。そんな親たちもいつまでも元気とは限らないし、来年にはもう時間を作れないかもしれません。今がそのときかもしれない、後で振り返ってあのときやっていればよかったと後悔するよりは、今とにかくやってみようということになったのです。

幸い2005年にNYに滞在したときに知り合った教会の友人が協力を申し出てくれ、そこからは驚くほどのスピードで話が進みました。受け入れ先のホームも決まり、住む場所も与えられました。一番難しいと言われていた滞在許可、ビザの申請も、先週無事通ったのです。

皆さんには、本当にご不自由をおかけすることになるのですが、そして、勝手なお願いなのですが、私の代わりに指導を申し出てくれた主人と一緒に、一年後私が戻ってくるまで、待っていて下さらないでしょうか?かならず全員が元気に顔をそろえて!

今回のことは、皆さんとのこの八年間の日々があったからこそ実現できたと思っています。向こうのシルバーの皆さんに、日本の歌や文化を教えたり、いろんな話をしてきたいと思います。

正直、こんなにすんなり決まるとは思っていなかったので、私にそんな大役を果たせるのだろうかと、今、すごく不安です。でも、くじけそうになったら、皆さんのこの笑顔を思い出して、今日の歌っているときの姿を思い出して、がんばって来ようと思います。本当に勝手をして申し訳ないのですが、皆さんの応援をいただけると嬉しいです。

すっかり長くなってしまって、申し訳ありません。
今日の演奏、本当にすばらしかったです。
皆さんと一緒に演奏できて幸せでした。ありがとうございました。
本当に勝手をさせていただいてすみません。よろしくお願いいたします。
**********************

てな感じです。
すべてこの通りに話せたってことはないけど、でも、一生懸命考えておいてよかったです。一度考えておいたからこそ、当日、落ちついて話せたと思います。わかってくれたメンバーの皆さんに感謝して、待っていてくださる気持ちを思って、私も向こうでがんばらなくちゃなって改めて思いました。

本番が終わってからは、見に来てくれた友人とピアニストさんとお茶して、帰宅。
あー、今日も一日が長かったー。

さぁ、これでやっと表のブログに報告できるってことだ。明日からぼちぼち書き始めよう。
by butakotanaka | 2008-03-13 12:07 | NY・留学